旅エッセイです。
深夜の青島空港で、
少しだけ止められた話。
バンコクからの帰りだった。
中国・青島空港で、
トランジットがあった。
中国って、
乗り継ぎでも一回入国して、
また出国しなきゃいけない。
最初はそれだけで緊張していたけど、
最近はだいぶ慣れてきた。
というか私は、
かなり中国経由が多い。
安いし、便利だし、
なんだかんだ中国トランジットを選んでしまう。
だから今回も、
「いつもの感じかな」
くらいに思っていた。
でも。
出国審査の女の人が、
やけに長かった。
パスポートを、
何度も何度もめくっている。
あれ。
なんか、長いな。
そう思った瞬間だった。
その人が、
ピッと何かを押した。
すると、
イミグレの奥から、
制服を着た男の人が二人出てきた。
急に、空気が変わった。
男の人たちは、
私のパスポートを見ながら、
何か話している。
しかも、
別の女の人が、
私の隣についた。
「ここで待ってて」
そう言われて、
ゲートを通ったすぐ後ろで待機。
ちょっとガラス越しに見える、
奥の部屋。
男の人二人は、
私のパスポートを持って、
そこへ入っていった。
私は動かないように、
その場で待つ。
隣には、
ずっと女の人が立っている。
たぶん、
完全に見張り役だったと思う。
そしてその時間が、
ものすごく長かった。
男の人たちが、
私のパスポートを指差しながら、
何か話しているのも見える。
その瞬間、
頭の中が一気に騒がしくなる。
え。
私、何かあった?
入国カード、書いたよね?
トランジットって説明したよね?
なんで?
中国経由が多すぎるから?
一回入国したのが良くなかった?
もちろん、
何も悪いことなんてしてない。
でも、
中国の空港って、
人を妙に不安にさせる。
その時ふと、
いつも見ている旅系YouTubeを思い出した。
「中国で別室に連れて行かれました」
「2〜3時間出てこられませんでした」
「イミグレ、毎回ドキドキするんですよね」
そういう話を、
私は今まで、
どこか他人事みたいに見ていた。
でもその時、
急に思った。
あ。
私も、そっち側に来たんだって。
見る側じゃなくて、
「止められるかもしれない側」。
なんか少しだけ、
旅人レベルが上がった気がした。
いや、
普通に心臓には悪いんだけど。
旅あるある。
旅慣れした頃に限って、
急にちゃんとビビる。
結局、
何事もなかった。
しばらくして、
パスポートは普通に返ってきた。
スタンプも押されていた。
私は普通に出国して、
普通に日本へ帰ってきた。
でも、
あの時間だけは、
今でも妙にリアルに覚えている。
旅って、
楽しいだけじゃない。
ちょっと冷や汗をかいて、
あとから笑い話になる。
そういうの全部含めて、
旅なんだと思う。
そして私はたぶん、
また懲りずに中国経由を使う。
安いし。
便利だから。
たまに、
心臓に悪いけど。

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