#07 お客さんがいなくても、ちゃんと回っている街

【旅エッセイ】旅あるある

旅エッセイです。

東南アジアの街を歩いていると、
店先に座り込んでいる人たちをよく見かける。

旅あるある。

洋服屋さん、マッサージ店、土産物屋。
だいたい一つのお店に、なぜか人数は多め。
椅子に座っておしゃべりをしたり、
ごはんを食べたり、
ただ、ぼーっと外を眺めていたりする。

正直、最初は不思議だった。
お客さんがほとんど入っていない時間帯でも、
店員さんたちは、ずっとそこにいる。

「これって、仕事なんだろうか」
そんなことを、つい考えてしまう。

でも、しばらく眺めていると、
少しずつ見え方が変わってきた。

物売りさんが、かごを持ってやってくる。
フルーツだったり、落花生だったり。
すると、店員さんたちが自然に声をかけて、
あれこれ話しながら、普通に買っている。

お客さんがいなくても、
お金がまったく動いていないわけじゃない。
目の前で、小さな経済がちゃんと回っている。

ある日、
そのやり取りの輪の中に、
なぜか私も混ざっていた。

「これ美味しいよ」
「塩付けると甘いよ」
そんな感じで、
店員さんと物売りさんと一緒になって勧められて、
気づいたらフルーツをいくつか買っていた。

かごいっぱいの南国フルーツ。
スイカにパイナップル、マンゴーにメロン。
甘い匂いと一緒に、今日も街をくるくる巡っている。
(撮影:tabi-fa)

50円の果物を、4つ。
観光客でも、店員でもない、
ちょっと不思議な立ち位置。

日本では、
働く時間と、休む時間。
売る人と、買う人。
そういう境目が、わりときっちり分かれている。

それに慣れていると、
この光景は、少し不思議に見えるかもしれない。

でも、ここでは、
その境目がとてもゆるやかだ。

売れない時間も、
誰かと一緒に過ごす時間として、
ちゃんとそこに流れている。

だからこの街は、
どこか窮屈じゃない。
生産性とは違うところで、
ちゃんと成り立っている感じがする。

立ち止まって見てみないと、
きっと気づかない。

でも、気づいてしまうと、
このゆるさが、ちょっと羨ましくなる。

今日もお客さんは少なめ。
それでも店先に座る人たちと一緒に、
この街にはゆるくて優しい風が流れている。in bari
(撮影:tabi-fa)

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