旅エッセイです。
東南アジアの街を歩いていると、
店先に座り込んでいる人たちをよく見かける。
旅あるある。
洋服屋さん、マッサージ店、土産物屋。
だいたい一つのお店に、なぜか人数は多め。
椅子に座っておしゃべりをしたり、
ごはんを食べたり、
ただ、ぼーっと外を眺めていたりする。
正直、最初は不思議だった。
お客さんがほとんど入っていない時間帯でも、
店員さんたちは、ずっとそこにいる。
「これって、仕事なんだろうか」
そんなことを、つい考えてしまう。
でも、しばらく眺めていると、
少しずつ見え方が変わってきた。
物売りさんが、かごを持ってやってくる。
フルーツだったり、落花生だったり。
すると、店員さんたちが自然に声をかけて、
あれこれ話しながら、普通に買っている。
お客さんがいなくても、
お金がまったく動いていないわけじゃない。
目の前で、小さな経済がちゃんと回っている。
ある日、
そのやり取りの輪の中に、
なぜか私も混ざっていた。
「これ美味しいよ」
「塩付けると甘いよ」
そんな感じで、
店員さんと物売りさんと一緒になって勧められて、
気づいたらフルーツをいくつか買っていた。

スイカにパイナップル、マンゴーにメロン。
甘い匂いと一緒に、今日も街をくるくる巡っている。
(撮影:tabi-fa)
50円の果物を、4つ。
観光客でも、店員でもない、
ちょっと不思議な立ち位置。
日本では、
働く時間と、休む時間。
売る人と、買う人。
そういう境目が、わりときっちり分かれている。
それに慣れていると、
この光景は、少し不思議に見えるかもしれない。
でも、ここでは、
その境目がとてもゆるやかだ。
売れない時間も、
誰かと一緒に過ごす時間として、
ちゃんとそこに流れている。
だからこの街は、
どこか窮屈じゃない。
生産性とは違うところで、
ちゃんと成り立っている感じがする。
立ち止まって見てみないと、
きっと気づかない。
でも、気づいてしまうと、
このゆるさが、ちょっと羨ましくなる。

それでも店先に座る人たちと一緒に、
この街にはゆるくて優しい風が流れている。in bari
(撮影:tabi-fa)



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